株式会社ノイズ研究所

規格情報 IEC 61000-4-3 放射イミュニティ試験について

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テレビの放送、携帯電話等などの無線通信装置はそのより輻射される電磁エネルギーが電子機器やケーブルなどに暴露されることにより、故障や誤動作などを起こすことがあります。放射イミュニティ試験は、テレビなどの放送、携帯電話等などの無線通信装置から輻射される電磁エネルギーに対する電気・電子機器の耐性を評価する試験です。

IEC 61000-4-3 放射電磁界ノイズの発生原因

【 IEC 61000-4-3 Ed.4 2020 の試験概要 】

1.一般的事項

この規格は、電気・電子機器に近接しないRF発生源(無線機器やテレビ・ラジオの放送、携帯電話等)からの放射電磁エネルギーによる、電気・電子機器の耐性試験について規定しています。

2.試験レベル

試験は、 80 MHzを超える周波数範囲で定義をしています。上限周波数は製品委員会にて決められた周波数となります。

表の試験レベルは無変調時のレベルで、試験を実施する際にはAM変調(1kHz 80%)による変調波を使用します。また、製品委員会は特定の試験レベルおよび変調方式を要求することができます。

レベル試験電界強度 V/m
11
23
310
430
X特別

※ Xはオープンクラスで製品仕様書で規定できる。

■ AM変調(80%)の振幅変調

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■ 試験用装置

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試験装置は以下のものが推奨されます。

● 電波無響室(電波暗室)

  EUTに対して電界均一性を保持するのに適した大きさをもつこと。電波半無響暗室(床面にグラウンドプレーンが敷かれた電波暗室)では電波の反射を抑制するため、追加の電波吸収体を用いることがあります。

● EMIフィルタ

  フィルタは、電源・信号線に重畳した電界ノイズが試験室の外や表示器に影響を与えないようにするため、設置する必要があります。ただし、フィルタを接続することで共振現象が起こらないように注意する必要があります。

● RF信号発生器

 試験信号の元となる発生器です。試験対象の周波数帯をカバーし、振幅変調(変調係数mを満たす)ができる機器が必要です。

振幅変調

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● 電力増幅器(パワーアンプ)

  RF 信号発生器で発生した信号を、必要なレベルとなるように増幅し、アンテナに供給する装置です。電力増幅器は飽和することなく使用できる電力容量の増幅器を使用します。発生した電界は希望する基本波によるものだけでなく、不要な高調波が含まれています。その為、基本波による電界強度に対して、高調波による電界強度が6 dB 以下となるように高調波が抑制されたものが必要です。また、80 %の振幅変調のピーク時においても利得の直線性が維持されるよう、2 dB 圧縮点を超過しない範囲で使用することが必要です。

● 電界発生アンテナ

 バイコニカルアンテナ、ログペリオディックアンテナ、ホーンアンテナなど、周波数要求を満たす直線偏波アンテナを使用します。

● 等方向性電界プローブ(センサ)

  発生した電界強度を測定するのに適した周波数範囲と感度を持つ必要があります。

● 進行波電力の計測装置(パワーメータ)

 方向性結合器とパワーメータを使用するか、順方向電力検出器またはモニターを増幅器とアンテナの間に挿入します。

● その他

  要求される電界強度に必要な電力レベルを記録するための関連機器が必要です。

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■ 試験用装置の特性

発生する電界が大きく、また、試験の実施には無線通信の干渉を禁止する様々な法規を遵守するために、試験は電波暗室内で実施する必要があります。

電界からの影響を避けるため、EUTとモニタ機器は電磁的な隔離が必要です。また、電波暗室内との相互接続配線は、伝導および放射された電磁波をEMIフィルタ等を介して十分に減衰させて、EUTの忠実な信号出力を維持するように注意します。

一般的な試験設備は、電界強度と電界均一性が確保でき、EUTを収容できる広さをもった電波無響室(電波暗室)または電波半無響室と、試験信号発生器やEUTモニタ装置、EUTを動作させる周辺機器を配置したシールドルーム(測定室)で構成されます。

■ 電界均一性測定

電界均一性測定の目的は、試験結果の有効性を確保する為に、EUTの全域に広がる電界分布の均一性を確認することです。

測定を行う際には、EUTを配置しない状態で行います。電界分布の均一性を確保する為に、アンテナと電界均一面との距離は少なくとも1m必要で、3mが理想です。この距離はアンテナの種類によっても異なり、バイコニカルアンテナの場合は中心点から、ログペリオディックアンテナの場合はアンテナの先端から測ります(アンテナの種類により給電点の指示がある場合もあります)。また、電波暗室内のアンテナの位置や距離、ケーブルの這わせ方なども記録しておき、実際に試験する際にも同じ状態で行います。

電界均一性の測定エリア範囲は、床面から任意の高さを基準に1.5m×1.5mに照射面を設定します。設定した範囲での電界強度が全測定ポイントの75%以上で、設定した電界強度の-0dB~+6dBの範囲であれば、電界は均一と見なされます(例えば16の測定ポイントの場合、少なくとも12ポイントが公差の範囲となります)。

最小電界均一面0.5m×0.5mの場合、その中心点に5番目のポイントを設定し許容範囲(下表参照)に収めるようにします。

電界プローブの適切な測定値を得るために、測定中は変調をしません。

電界均一面は、最小が0.5 m×0.5 m 且つ、EUTおよびケーブルの全体が収まる大きさが必要です。均一面の大きさは0.5m 単位で拡大が可能です。(例:0.5 m×1.0 m; 2.0 m×2.0 m)

EUTとケーブルが1.5 m×1.5 m の均一領域に収まらず、且つ、均一領域の拡大が困難な場合は、代替として部分照射法を行います。

部分照射法を実施する際には以下のいずれかの方法で実施します。

○ 均一領域を合成することでカバーできるよう、アンテナの位置を移動させて校正を実施し、それぞれの位置において連続して試験を実施します。

○ 試験領域すべてを均一領域に収める為、EUTを様々な位置に移動して試験を実施します。

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EUTサイズに対する電界均一面と特性評価方法

周波数範囲EUTが電界均一面内に完全に収まるときの 電界均一面サイズおよび特性評価方法 (全面照射、優先方法)EUTが電界均一面内に完全に収まらないときの 電界均一面サイズおよび特性評価方法 (部分照射、代替方法)
1GHz未満○ 最小電界均一面サイズ:0.5 m × 0.5 m ○ 0.5m格子の電界均一面サイズ   (例えば、0.5m×0.5m、0.5m×1.0m、1.0m ×1.0m、   1.0m×1.5m、1.5m×1.5m、1.5m ×2.0m、   2.0m ×2.0m、3.0m ×2.0mなど) ○ 0.5 m×0.5 m格子の各ポイント毎での特性評価 ○ 電界均一面が0.5m×0.5 mよりも大きい場合、特性評価ポイン  トの 75 %が仕様内。0.5 m×0.5 mの 電界均一面では  100 %(5ポイントすべて)が仕様内でなければなりません。○ 最小電界均一面 サイズ: 1.5 m × 1.5 m ○ 0.5 m格子の 電界均一面サイズ   (例えば、1.5m×1.5m、1.5m ×2.0m、2.0m ×2.0mなど) ○ 0.5 m ×0.5 m格子の各ポイント毎での特性評価 ○ 特性評価ポイントの75%が仕様内
1GHz以上○ 最小電界均一面 サイズ: 0.5 m × 0.5 m ○ 0.5 m格子の 電界均一面サイズ   (例えば、0.5m×0.5m、0.5m×1.0m、1.0m×1.0m、1.0m×1.5m、 1.5m×1.5m、1.5m ×2.0m、2.0m ×2.0mなど) ○ 0.5m×0.5m格子の各ポイント毎での特性評価 ○ 電界均一エリアが0.5m×0.5mよりも大きい場合、特性評価ポイント   の75%が仕様内。 ○ 0.5 m×0.5 mの 電界均一エリアでは   100 %(5ポイントすべて)が仕様内でなければなりません。

電界均一性測定には定電界法と定電力法がありますが、どちらの手法でも同一の結果が得られます。

以下は電界均一面16ポイントでの測定を実施した際の手順です。(本書では、定電力法について説明します。)

測定手順について

1. 16 ポイントのグリッドの1 つに電界プローブを置き、試験信号発生器を試験周波数範囲の最低周波数(例:80 MHz)に設定します。

2. 電力を電界発生アンテナに供給し、得られた電界強度が要求の1.8 倍に等しくなるようにします(信号は無変調)。

その際の進行波電力および電界強度の測定値を記録します。

3. 周波数を現在の周波数の1 %以内で増加させます。

4. 周波数が試験範囲での最高周波数を迎えるまでステップ2.及び3.を繰り返します。

5. 電界プローブをグリッド内の他のポイントに移動させます。1.~4.のステップで使用した各周波数における進行波電力を適用し、電界強度の測定値を記録します。

6. グリッド内の各ポイントに対して、ステップ5.を繰り返します。

各周波数において、

7. 16 ポイントの電界強度の測定値を、大きい値から順に並べ変えます。

8. 一つのポイントの電界強度を基準として選択し、この基準からの偏差をデシベル単位で計算します。

9. 電界強度の最小値より、少なくともこの値より大きい11 の読みが、その最小値の0 dB~+6 dB の許容差以内にあるかを確認します。

10. これらがこの許容差以内に入らない場合、ステップ8で選択したポイントの次の大きい電界強度のポイントを選択し、確認を行います。(各周波数に対してこの確認は5 回だけです)

11. 少なくとも12 ポイントが6 dB 以内であれば、そのポイント(ステップ8で選択したポイント)が最小電界強度の基準位置となります。

12. 基準位置において、要求された電界強度を発生させるのに必要な進行波電力を計算します。

13. これにより、12 ポイントは目標とする電界強度の0~+6 dB 以内となり、規格要求を満たすことになります(電界は均一とみなす)。0.5 m×0.5 m の最小の均一面の場合は、5つのポイントすべての電界強度をこの許容差以内にします。

14. それぞれの周波数に対して、水平偏波と垂直偏波にて測定を行います。

最後に、試験システムが飽和していないことを確認します。上記手順で取得した、要求に対して1.8 倍の電界強度を発生させるのに

必要な試験信号発生器の出力から、5.1dB 減少させます。その際に、アンテナに送られる新たな進行波電力の減少が3.1~5.1 dB の間であれば試験システムは飽和していないと判断します。

.試験のセットアップ

試験におけるEUTの設置は、全て実際の設置条件にできるだけ近づけた構成で実施します。配線は製造者の推奨に一致させます。

また、EUTは指定が無い場合は筐体の中に入れ、全てのカバーおよびアクセスパネルを装着します。

EUTを保持する必要がある場合は、非金属、非導電性の材料を使用します。ただし、機器の筐体やケースへの接地に関しては機器仕様書に一致させる必要があります。

より高い周波数(1GHzを超えるような周波数)では、木製や強化プラスチック製のテーブルや支持体は反射特性を持つようになるため、電界均一性を維持するために、硬質ポリスチレンなどの低誘電率の材料を使用することが望ましいです。

■ 卓上型機器の配置

卓上型機器は試験設備内で高さ0.8mの非導電性テーブルの上に配置します。

電界均一面の下端が0.8m以下の高さで始まる場合でも、0.8mの非導電性テーブルの上に配置します。

電源や信号線の接続は機器の据付指示書に従って行います。

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■ 床置型機器の配置

床置型機器は、電界のひずみを防止するために0.05m以上の高さの非伝導性支持台に配置するのが望ましいです。

EUTが電界均一面の下限より0.5m以上出ている場合、電界均一面下限の50%の高さで、水平全てのポイントの電界強度を記録します。

<底部から給電するケーブルを持つEUTの例>

EUTは絶縁パレットや厚さ0.05m以上の絶縁支持体の上に設置することが望ましいです。(非導電性ローラーも利用できます。)

EUTケーブルは大地に這わせるように設計されておらず、実際の配置でもケーブルはEUTの筐体で遮蔽され地下に送られるため、電界に暴露させる必要はありません。

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<架空ケーブルを持つEUTの例>

信号ケーブルは実際の設置方法に沿って架空配線します。EUT設置の一部としてケーブルトレイが導電性や遮蔽性の場合には、そのケーブルトレイも試験セットアップで使用するのが望ましいです。

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<複数のケーブルやAEを持つEUTの例>

複数のAE間に異なるサイズや信号線、電源ケーブルを持つ場合、ケーブルは1mの長さで水平または垂直方向で電界に曝します。ただし、EUTとAE間の固定長の短いケーブルは規定に沿って暴露できないので、製品仕様に従って配置します。

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<側面から給電するケーブル、および複数の電界均一面を持つ大型EUTの例>

側面から給電するケーブルを持つEUTで複数の電界均一面で覆う必要がある場合、電界均一面は側面から給電するケーブルを含めるようにし、EUT全体が電界均一面に覆われるまで、EUTに沿ってアンテナや電波吸収体を移動させます。

可能であれば、EUTを接続する各ユニット間のケーブルは低誘電的にケーブルの中央で束ねます。

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■ 配線の処理

ケーブルは製造者の指定した配線形式およびコネクタを使用して供試品に取付け、一般的な据付および使用する状況を模擬して配置します。EUTへの配線の指定が無い場合は、非シールドのケーブルを使用して接続します。

ケーブルの長さは

① 1 m 以下のケーブル: EUTに1m以下のケーブルが使用されている場合は、そのまま電界に曝すように配置します。

② 1 m 以上、もしくは指定されていない場合: 据付手順に従って配置します。

③ 規定されていない場合: 最低1m以上のケーブルを垂直または水平方向の向きで電界に曝すように配置します。

EUTと相互接続する余分な長さのケーブルは、ケーブルの中心で誘導性が低くなるように束ねます。

また、余分なケーブルを減結合させる場合、使用する減結合(フィルター挿入等)がEUTの動作を損なわないようにします。

減結合にCMAD(Common-mode absorption device:コモンモード吸収デバイス)を使用する場合、CMADは必ず床上に平らに置き減結合する各ケーブルはそれぞれ独立したCMADを使用することが望ましいです。

■ 人体装着型装置の配置

卓上型機器の配置にて試験を実施しても良いですが、人体の特性を考慮していないため、過大評価または過小評価になる場合があります。

このため、製品委員会にて適切な人体模擬装置の使用を規定することが推奨されています。

4.試験手順

試験の実施前に、試験システムが正常に動作していることを検証するため、特性評価済の電界強度を確認することが望ましいです。

○ EUTの1面が電界均一面と一致するように置きます。

○ 部分照射を適用しない場合、照射されるEUT面は電界均一面内に含まれる必要があります。

○ 周波数範囲を変調した信号で掃引します。

○ 信号のレベル調整やアンテナを切り替える際には掃引を中断します。

○ 周波数を掃引する際にはその前の周波数数値の1%以内とします。

○ 各周波数での照射時間は、EUTが作動し反応するのに必要な時間以下にならないようにし、最小0.5 s の照射時間が必要です。

○ 試験はEUTの各面に対して実施する必要があります。

○ 照射する電界の偏波はEUTの各面に対し、水平及び垂直の両偏波にて行います。

○ 試験中はEUTを充分に動かし、また全ての重要な動作モードにて試験を行います。

5.試験結果と試験報告

試験結果はEUTの仕様および動作条件によって以下の分類を行ないます。

1)仕様範囲内の正常動作

2)自己回復が可能な一時的な劣化または機能や性能の低下

3)オペレーターの介入またはシステムの再起動を必要とする一時的な劣化または機能や性能の低下

4)機械やソフトウェアの損傷、またはデータの損失による回復不能な劣化や機能の低下

妨害信号を放射したすべての期間について装置がイミュニティを示し、かつ試験の終了後にEUTが機能仕様書の中で規定されている要求事項を満たせば、一般的には試験結果は良好と考えられます。

試験報告は、試験条件および試験結果を含む必要があります。

● 「試験報告書に記載する例」には次の内容を記載します。

  ○ EUTおよび関連機器のID(例:商標、製品型番、製造番号など)

  ○ 試験装置のID(例:商標、製品型番、製造番号など)

  ○ EUTの寸法

  ○ EUTの代表的な動作条件

  ○ EUTを卓上形または床置き形として、または組合せて試験をしたかどうか

  ○ EUTが床置き形の場合、支持台の高さ

  ○ 使用した試験設備および放射アンテナの位置

  ○ 使用したアンテナのタイプ

  ○ 電界均一面のサイズおよび形状

  ○ 部分照射の使用の有無 

  ○ 試験をした周波数範囲

  ○ 周波数の掃引率、持続時間および周波数ステップ数

  ○ 適用した試験レベルおよび変調

  ○ 使用した相互接続線やEUTのインターフェースポートの種類や数

  ○ 適用した性能判定基準(共通規格、製品規格や製品群規格)

  ○ 合否判定の根拠

  ○ 装置の取り扱いに関する特定条件(例えば、適合性達成のために必要とする、ケーブル長やシールド、接地条件など)

  ○ EUTの動作方法の説明

  ○ 試験実施時の特別な環境条件

  ○ 試験を実施するために必要となった特別な条件

  ○ ケーブルの配置や機器の位置、向きなどに関する記述や写真

  ○ 本規格からのあらゆる逸脱

注意:この試験方法および接続方法はIEC 61000-4-3 Ed.4(2020)規格を参照し記載しております。詳細な試験方法等につきましては規格書の原文を御参照ください。

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