規格情報 IEC 61000-4-11 電源電圧変動試験について
発電所や変電所などのトラブルやメンテナンスなどによる配電ルートの切り替えによる生じる電源電圧の瞬低や瞬断、負荷の高い装置などを駆動することにより生じる電源電圧の変動など、電源電圧の変化により電気・電子機器などが誤動作や故障などを起こすことがあります。電源電圧変動試験は、これら電圧変動に対する電気・電子機器の耐性を評価する試験です。
【 IEC 61000-4-11 Ed.3 2020の試験概要 】
1.一般的事項
この規格は、低電圧電源回路網に接続された電気及び電子機器が、停電・電圧変動等に対して誤動作を起こさないかどうかを評価するためのイミュニティ評価規格です。相あたり16Aを超えない定格入力電流の電気及び電子機器に適用をしています。
50Hz又は60Hzの交流回路網に接続する機器を対象としており、400Hzの交流回路網に接続する機器には適用されません。
2.試験レベル
・電圧試験レベルの基準(UT)として、機器の定格電圧を使用します。
・定格電圧の範囲がある場合は、定格電圧範囲に規定した下限電圧の20%を超えなければ、その範囲内の単一の電圧を試験レベル仕様(UT)の基準として指定してもよい、とされています。
2-1.電圧ディップと停電
表1-電圧ディップに対する適切な試験レベル及び継続時間
クラスa | 電圧ディップ(ts)に対する試験レベル及び継続時間(50Hz/60Hz) | ||||
クラス1 | 機器の要求事項により個別に設定 | ||||
クラス2 | 1/2サイクルの 間0% | 1サイクルの 間0% | 25/30cサイクルの間70% | ||
クラス3 | 1/2サイクルの 間0% | 1サイクルの 間0% | 10/12cサイクルの 間40% | 25/30cサイクルの 間70% | 250/300cサイクル の間80% |
クラスXb | x | x | x | x | x |
a IEC 61000-2-4によるクラス:附属書B参照。
b クラスXは、オープンクラスで製造者とユーザーとの合意により設定。
c “25/30サイクル”は、“50Hz試験に対して25サイクル”及び“60Hz試験に対して30サイクル”を意味する。
※ それぞれのディップ%は、定格電圧(Ut)に対する電圧とする。
表2-停電に対する試験レベル及び継続時間(50Hz/60Hz)
クラスa | 停電(ts)に対する試験レベル及び継続時間(50Hz/60Hz) |
クラス1 | 機器の要求事項によりケースバイケース |
クラス2 | 250/300cサイクルの間0% |
クラス3 | 250/300cサイクルの間0% |
クラスXb | x |
a IEC 61000-2-4によるクラス:附属書B参照。
b クラスXは、オープンクラスで製造者とユーザーとの合意により設定。
c “250/300サイクル”は、“50Hz試験に対して250サイクル”及び“60Hz試験に対して300サイクル”を意味する。
電圧ディップ例-70%電圧ディップ正弦波グラフ
備考 電圧は、25周期間に70%に低下する。ゼロクロスで遷移。
電圧ディップ例-40%電圧ディップ実効値
tf:立ち下がり時間
tr:立ち上がり時間
ts:低下した電圧の
持続時間
停電
tf:立ち下がり時間
tr:立ち上がり時間
ts:低下した電圧の
持続時間
2-2.電圧変動(オプション)
表3-短期間の供給電圧変動のタイミング
電圧試験レベル | 電圧低下に 要する時間(td) | 低下電圧に おける時間(ts) | 電圧上昇に 要する時間(ti) (50Hz/60Hz) |
70% | 急激 | 1サイクル | 25/30bサイクル |
Xa | Xa | Xa | Xa |
a クラスXは、オープンクラスで製造者とユーザーとの合意により設定
b “25/30サイクル”は、“50Hz試験に対して25サイクル”及び“60Hz試験に対して30サイクル”を意味する。
電圧変動
3.試験用発生器の特徴及び性能
無負荷の出力電圧 | 表1で要求のとおりに、残留電圧値の±5% |
試験器の出力における負荷による電圧変動100%出力:0?16A 80%出力:0?20A 70%出力:0?23A 40%出力:0?40A | UTの5%未満 UTの5%未満 UTの5%未満 UTの5%未満 |
出力電流容量 | 定格電圧で相当たり実効値で16A。 試験器は5秒までの継続時間で、定格電圧の80%で20Aを流すことが出来なければならない。 この試験器は、3秒までの継続時間で、定格電圧の70%で23A及び40%で40Aを 流すことができなければならない(この要件は、供試機器の定格定常供給電流に従って緩めてもよい。 ピーク電流の検証参照。 |
ピーク突入電流の能力(電圧変動試験には不要) | 試験器によって制限されない。 ただし、試験器の最大ピーク能力は、250?600V電源の場合1000Aを、 200?240V電源の場合500Aを、又は100?120V電源の場合250Aを超える必要は無い。 |
試験器に100Ω抵抗負荷を接続した場合の、実電圧の瞬間ピークオーバーシュート/アンダーシュート | UTの5%未満 |
試験器に100Ωの抵抗負荷を接続した場合の、 急激な変動中の電圧上昇(及び降下)時間tr(及びtf)、前項電圧ディップ例40%電圧ディップ実効値および停電の図参照。 | 1?5μs |
位相変位/(必要に応じて) | 0?360° |
電圧ディップ及び停電の電力周波数との位相関係 | ±10°未満 |
試験器のゼロ接点調整 | ±10° |
■ ピーク電流の検証
G 90°及び270°で切り換えられる電圧しゃ(遮)断発電器
T オシロスコープへの監視用出力を持つ電流プローブ
B 整流器ブリッジ
R 10000Ω以下又は100Ω以上のブリーダー抵抗器
C 1700μF ±20%の電界コンデンサ
停電試験器の突入電流駆動能力を決定する回路
供試品(EUT)が、規定のピーク電流以下の試験器を用いることができると考えられる場合には、まずEUTのピーク突入電流を確認します。測定されたEUTのピーク突入電流は、試験器のピーク電流駆動能力の70%未満であることが必要です。
4. 試験のセットアップ
試験は、EUTの製造業者が規定する最短の電源供給ケーブルで試験器に接続します。長さについて規定がない場合は、接続に適切な極力短いケーブルを使用します。
5.試験手順
■ 試験の実施
・最小10秒間隔で、選択した試験レベル及び継続時間のディップ/停電の試験を各3回行います。
・代表的な動作モードについてそれぞれ試験を行います。
・電圧ディップ試験の開始位相角は、ゼロクロス及び、必要に応じて45°・90°・135°・180°・225°・270°・315°の中から選択して行います。
停電については、最悪の例として製品委員会が規定する角度にて行わなければなりません。規定が存在しない場合は、0°を使用することを推奨します。
・電圧変動(オプション)は、最も代表的な動作モードについて、10秒間隔で3回、試験を行います。
6.試験結果と試験の報告
試験結果はEUTの仕様及び動作条件によって以下の分類を行います。
1)使用範囲内の性能(正常)
2)自己回復が可能な機能、または一時的な劣化、または機能や性能の劣化
3)オペレーターの介入やシステムの再起動を必要とする一時的な劣化、または機能や性能の劣化
4)機能やソフトウェアの損傷、またはデータの損失による回復不能な劣化や機能の低下
一般に、電源電圧変動試験器を行っている全期間にわたってそのイミュニティを示し、かつ試験の終了時にEUTが技術仕様書内で規定した機能上の要求事項を満足する場合は、検査結果は良好と考えられます。試験報告は、試験条件及び試験結果を含む必要があります。
注意: この試験方法はIEC61000-4-11 Ed2 2004規格を抜粋したものです。詳細な試験方法等につきましては規格書の原文をご参照下さい。