規格情報 ISO 11452-8 Ed.2 2015(磁界に対するイミュニティ試験)の概要
【 ISO 11452-8 Ed.2 2015の試験概要 】
1.一般的事項
ここの規格は、車両システムの磁界イミュニティ試験についての規格です。車両搭載電子機器が磁界ノイズに曝された際の耐性を評価する試験です。磁界発生源が車両内部の機器等で発生する内部磁界と、送電線・発電所及び発動機といった外部磁界を想定した評価があります。
2.試験レベル
■ 周波数:DC および 15Hz ~ 150kHz
■ 試験レベル(内部磁界)
周波数帯域 Hz | 試験レベルⅠ A/m | 試験レベルⅡ A/m | 試験レベルⅢ A/m | 試験レベルⅣ A/m | 試験レベルⅤ A/m |
0(DC) | 90 | 300 | 900 | 3000 | 当事者間で合意した値 |
15~1000 | 30 | 100 | 300 | 1000 | |
1000~10000 | 30/(f/1000)2 | 100/(f/1000)2 | 300/(f/1000)2 | 1000/(f/1000)2 | |
10000~150000 | 0.3 | 1 | 3 | 10 |
試験の厳しさレベルと周波数帯域(内部磁界)
■ 試験レベル(外部磁界)
周波数帯域 Hz | 試験レベルⅠ A/m | 試験レベルⅡ A/m | 試験レベルⅢ A/m | 試験レベルⅣ A/m | 試験レベルⅤ A/m |
0(DC) | 90 | 300 | 900 | 3000 | 当事者間で合意した値 |
15~60 | 30 | 100 | 300 | 1000 | |
60~180 | 30/(f/60) | 100/(f/60) | 300/(f/60) | 1000/(f/60) | |
180~600 | 10 | ||||
600~1800 | 10 | ||||
1800~6000 | 10 | ||||
6000~150000 | 10 |
試験の厳しさレベルと周波数帯域(外部磁界)
3.試験装置の記述及び仕様
■ 試験装置について
試験装置は次のもので構成する必要があります。
・放射ループ又はヘルムホルツコイル
・磁界強度モニタ
・ファンクションジェネレータ(信号生成器)
・電力増幅器(誘導性負荷の駆動が可能なもの)
・スペクトラムアナライザ,マルチメータ等の電圧モニタ器
・カレントプローブ等の電流モニタ器
・擬似電源回路網
システムブロック
■試験装置の詳細について
仕様が規格で謳われている放射ループ又はヘルムホルツコイル/磁界強度モニタおよび電圧モニタ器の注意点について記載します。
○放射ループについて
ISO11452-8で推奨しているMIL STD 461F規格での放射ループは、次のような特性をもっています。
・直径:120 mm
・巻き数:20 ターン
・電線:約2.0 mm
放射ループによる磁界強度の算出方法は、ループ面から50mm離れたところの磁界は式(1)によって求めることができます。
(a:60mm z:50mm 巻き数n:20)
式(1)を展開すると式(2)となります。
式(2)をもとに、行いたい試験レベルから電力増幅器の選定を行います。
図4 放射ループ
○ヘルムホルツコイルについて
ISO11452-8では放射ループの代替法としてヘルムホルツコイルの使用が可能です。
ヘルムホルツコイルは同心円の2つのコイルで構成されており、より広い範囲において均一な磁場、磁界を発生させることができます。
コイルとDUT(供試品)との配置関係は規格では図2のように推奨しています。
ヘルムホルツコイルの配置
○放射ループとヘルムホルツコイルの特徴について
ISO11452-8では放射ループの代替法としてヘルムホルツコイルの使用が可能です。
ヘルムホルツコイルは同心円の2つのコイルで構成されており、より広い範囲において均一な磁場、磁界を発生させることができます。
コイルとDUTとの配置関係は規格では図2のように推奨しています。
メリット | デメリット | |
放射ループ | コイルが低インピーダンスの為、電源の小型化が可能 | コイルが低インピーダンスの為試験時間が長くなる。 (DUTの各面を100mm*100mm以下に区切り,各々の区域にて試験を実施) |
システム構築内容がDUTのサイズに影響されない。 | ||
ヘルムホルツコイル | 均一空間が広いため,試験時間の短縮が可能。 (配置方向はX、Y又はZ軸の3方向にて試験を実施) | コイルのインピーダンスが高い為、電源が大型化する。 |
コイルが大きくコイルの巻線間のC容量により、 試験周波数帯で共振点が生じる可能性がある。 |
○磁界強度モニタについて
放射ループを用いて試験をする際は、下記のように仕様が規格で決められています。
・直径:40mm
・巻き数:51ターン
・電線:約0.071mm
・遮蔽:電界
磁界強度モニタは、周波数範囲が15Hz~150kHzで最低1000A/mの磁界強度を測定できるものが望ましいとされております。
またDCに関しては、ガウスメータなどのホールセンサに基づいた計測器を使用します。
○電圧モニタ器について
磁界強度モニタにより得られた出力値を測定する為に使用します。測定には一般的にマルチメータやスペクトラムアナライザを使用します。ただし、本規格は試験レベルのダイナミックレンジが広く、マルチメータなどリニア系の測定器を使用する際は一般的に周波数やモニタ値により測定確度が異なる為、注意が必要です。またスペクトラムアナライザの多くは測定周波数の下限が9kHzからとなる場合が多い為、置換法で行う場合は10Hzからモニタ可能なスペクトラムアナライザを使用する必要があります。
4.試験のセットアップ
試験のセットアップ
1:DUT
2:放射ループ
3:電流プローブ
4:発信号生成器及び電力増幅器
5:オシロスコープ
6:電源
7:バッテリ
8:センサ
9:アクチュエータ
10:絶縁支持装置
11:ラウンド面 (試験計画で要求されるている場合)
12:3直交位置
5.試験手順
目的の磁界を発生させるために必要となるコイル電流値を決定する必要があります。
放射ループ試験法では式(2)から計算値を用いて実測法により電流値を決定します。
ただし、DC及び1Point(例:10kHz)の周波数で事前に[放射ループ検証]の通りコイル電流値を検証する必要があります。
ヘルムホルツコイル法では置換法によりコイル電流値を決定します。
その為、事前に[ヘルムホルツ検証]の通り各試験周波数でコイル電流値を検証する必要があります。
放射ループ検証
ヘルムホルツコイル検証
1:放射ループまたはコイル
2:電流モニタ
3:電力増幅器
4:信号生成器
5:モニターループアンテナ
6:スペクトラムアナライザ
■放射ループ法
1.放射ループをDUT上のテストポイントから50mm離して配置します。
2.実測法により目的の磁界レベルを照射します。(最低1秒間照射)
3.周波数を変更し、試験の最高周波数まで手順2を繰り返します。
4.DUTをモニタして、誤動作が発生した場合はその磁界強度と周波数
を記録します。
5.上記のステップを、DUTの別のテストポイントについても繰り返し
行います。
放射ループ試験
1:コイル
2:電流モニタ
3:電力増幅器
4:信号生成器
5:DUT
6:配線用ハーネス
7:周辺機器
■ヘルムホルツコイル法
1.ヘルムホルツコイルの一様な磁界領域(均一な磁界領域)にDUTを配置します。
2.置換法により目的の磁界レベルを照射します。(最低1秒間照射)
3.周波数を変更し、試験の最高周波数まで手順2を繰り返します。
4.DUTをモニタして、誤動作が発生した場合は、磁界強度と周波数を記録します。
5.上記のステップを、別の配置方向(X、Y又はZ軸)についても繰り返し行います。
ヘルムホルツコイル試験
1:放射ループ
2:電流モニタ
3:電力増幅器
4:信号生成器
5:DUT
6:配線用ハーネス
7:周辺機器
注意:この試験の概要につきましては、ISO 11452-8 Ed.2 2015を抜粋したものです。詳細な測定方法などにつきましては、規格書の原文をご確認ください。