規格情報 ISO 7637-2 Ed.3 2011(過渡電圧サージ試験・過渡エミッション測定)の概要
【 ISO 7637-2 Ed.3 2011の試験概要 】
1.一般的事項
この規格は、12V系又は24V系の車両に搭載された電子・電気機器の電導性電気的過渡現象に対する耐性の評価(イミュニティ)及び計測(エミッション)に関する規定をし、あわせて過渡現象に対する故障モードの厳しさレベル分類も記載しています。
本書では、過渡サージイミュニティ試験を中心に記述し、過渡エミッション測定は参考として後述します。
■ 過渡サージイミュニティ試験
電源線からの過渡サージ現象に対する耐性評価(イミュニティ)試験は、パルス発生器を使用します。ただし、この規格で記載されているパルスはあくまで代表的な特性であり、車両内で発生するすべての過渡サージ現象を満足するものではありません。
2.試験レベル
最終的には、車両製造業者と搭載電子機器製造業者間での合意によります。
【12V系の推奨試験レベル】
試験パルス | 試験レベル(V) | 最小パルス 又は試験時間 | バーストサイクル時間 パルス反復時間 | ||||
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | ||||
1 | -75 | -112 | -150 | 5000パルス | Min 0.5s | ※ | |
2a | +37 | +55 | +112 | 5000パルス | Min 0.2s | Max 5s | |
2b | +10 | +10 | +10 | 10パルス | Min 0.5s | Max 5s | |
3a | -112 | -165 | -220 | 1時間 | Min 90ms | Max 100ms | |
3b | +75 | +112 | +150 | 1時間 | Min 90ms | Max 100ms |
【24V系の推奨試験レベル】
試験パルス | 試験レベル(V) | 最小パルス 又は試験時間 | バーストサイクル時間 パルス反復時間 | ||||
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | ||||
1 | -300 | -450 | -600 | 500パルス | Min 0.5s | ※ | |
2a | +37 | +55 | +112 | 500パルス | Min 0.2s | Max 5s | |
2b | +20 | +20 | +20 | 10パルス | Min 0.5s | Max 5s | |
3a | -150 | -220 | -300 | 1時間 | Min 90ms | Max 100ms | |
3b | +150 | +220 | +300 | 1時間 | Min 90ms | Max 100ms |
※ 0.5s以上で、供試品(DUT)が正常に初期化できる最小時間
3.発生器の仕様および出力波形の検証
■ 試験パルス発生器の仕様
Pulse1 供試品(DUT)に並列に接続した誘導負荷による電源切断時の過渡現象を再現
パラメータ | 12V系 | 24V系 |
Us | -75~-150V | -300~-600V |
Ri | 10Ω | 50Ω |
td | 2ms | 1ms |
tr | 1μs+0/-0.5μs | 3μs +0/-1.5μs |
t1a | =0.5s | |
t2 | 200ms | |
t3b | <100μs |
a:次のパルスを印加する前にDUTが正しく初期設定されるための最短時間
b:t3は電源の遮断とパルスの印加との間に必要な可能最短の時間
出力波形
実際の波形
Pulse2a ワイヤーハーネスの誘導に起因する電流遮断による過渡現象を再現
パラメータ | 12V系 | 24V系 |
Us | +37~+112V | |
Ri | 2Ω | |
td | 0.05ms | |
tr | 1μs +0/-0.5μs | |
t1a | 0.2~5s |
a:反復時間t1は、開閉に応じて短くすることができる。短い反復時間を使用すると、試験時間は短縮される。
出力波形
実際の波形
Pulse2b イグニッションoff 時の直流モーターから発生する過渡現象を再現
パラメータ | 12V系 | 24V系 |
Us | 10V | 20V |
Ri | 0~0.05Ω | |
td | 0.2s~2s | |
t12 | 1ms ±0.5ms | |
tr | 1ms ±0.5ms | |
t6 | 1ms ±0.5ms |
出力波形
実際の波形
Pulse3a 誘導負荷のスイッチ開閉による過渡現象を再現
パラメータ | 12V系 | 24V系 |
Us | -112~-220V | -150~-300V |
Ri | 50Ω | |
td | 150ns ± 45ns | |
tr | 5ns ±1.5ns | |
t1 | 100μs | |
t4 | 10ms | |
t5 | 90ms |
出力波形
実際の波形
Pulse3b 誘導負荷のスイッチ開閉による過渡現象を再現
パラメータ | 12V系 | 24V系 |
Us | +75~+150V | +150~+300V |
Ri | 50Ω | |
td | 150ns ± 45ns | |
tr | 5ns ±1.5ns | |
t1 | 100μs | |
t4 | 10ms | |
t5 | 90ms |
出力波形
実際の波形
■ 試験パルス発生器の検証
下記の配置図のように各機器を設置し、それぞれのパルスに対して無負荷時あるいは抵抗負荷装着時における出力波形の電圧および立上り・幅などを確認します。
・DUTは、厚さが50±5mmの低伝導性で比誘電率が低い(εr≦1.4)支持台上に置きます。
・DUTケースのグラウンドプレーンへの接地は、車両への実装状態を反映します。
・試験パルス3a/3bについては、試験パルス発生器とDUTの端子間のリード線は、比誘電率が低い(εr≦1.4)支持台上に平行な直線状にして、長さは500±100mmにします。
・負荷シミュレータは基準グラウンドプレーン上に直接置きます。
1.オシロスコープ又は同等品
2.電圧プローブ
3.パルス発生器
4.供試品(DUT)
5.基準グラウンドプレーン
6.接地接続 (※Pulse3の場合、長さMax100mm)
7.負荷シミュレータ
8.相互接続ケーブル
9.負荷シミュレータ接地(必要な場合)
Pulse | 負荷/無負荷 | Us | tr | td | t12 |
Pulse1 (12V系) | 無負荷 | -100V ±10V | 1μs +0/-0.5μs | 2000μs ±400μs | - |
10Ω負荷 | -50V ±10V | - | 1500μs ±300μs | - | |
Pulse1 (24V系) | 無負荷 | -600V ±60V | 3μs +0/-1.5μs | 1000μs ±200μs | - |
50Ω負荷 | -300V ±30V | - | 1000μs ±200μs | - | |
Pulse2a (12・24V系) | 無負荷 | +75V ±7.5V | 1μs +0/-0.5μs | 50μs ±10μs | - |
2Ω負荷 | +37.5V ±7.5V | - | 12μs ±2.4μs | - | |
Pulse2b (12・24V系) | 無負荷 | +10V ±1V(12V系) | 1ms ±0.5ms | 2s ±0.4s | 1ms ± 0.5ms |
+20V ±2V(24V系) | |||||
Pulse3a (12・24V系) | 無負荷 | -200V ±20V | 5ns ±1.5ns | 150ns ±45ns | - |
50Ω負荷 | -100V ±20V | ||||
Pulse3b (12・24V系) | 無負荷 | +200V ±20V | |||
50Ω負荷 | +100V ±20V |
※電力増幅器の電流容量が小さいと検証できない場合があります。
4.試験のセットアップと試験手順
■ 試験電圧
試験電圧 | 12V系 | 24V系 |
UA | 13.5V ±0.5 V | 27V ±1 V |
■ 周囲温度
23℃ ±5℃
■ 試験配置
下記図のように各機器を設置し試験レベル等を参照の上、それぞれのパルスをDUTに注入します。
・試験中は、オシロスコープと電圧プローブを取り外します。
・Pluse3a/3b:試験パルス発生器と供試品(DUT)端子間のリード線は、基準グラウンドプレーンから高さ50mm ±5mmで平行・直線に引き回し、またそのリード線の長さは0.5m±0.1mとなっています。
1.オシロスコープ又は同等品
2.電圧プローブ
3.パルス発生器
4.供試品(DUT)
5.基準グラウンドプレーン
6.接地接続 (※Pulse3の場合、長さMax100mm)
7.負荷シミュレータ(必要な場合、基準グラウンドプレーンに接続)
8.相互接続ケーブル
9.負荷シミュレータ接地(必要な場合)
● 過渡エミッション測定の概要
供試品(DUT)とバッテリ又は開閉器間にある電源線からの伝導性の過渡エミッションは潜在的な伝導妨害源とみなされるため、DUTの電気・電子部品を評価する必要があります。
■ 推奨限度値
【12V系の推奨限度値】
パルス振幅(Us) | 厳しさレベル | |||
Ⅰ/Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | |
正低速パルス | +25V | +37V | +75V | 業者間による |
負低速パルス | -50V | -75V | -100V | |
正高速パルス | +50V | +75V | +100V | |
負高速パルス | -75V | -112V | -150V |
【24V系の推奨限度値】
パルス振幅(Us) | 厳しさレベル | |||
Ⅰ/Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | Ⅴ | |
正低速パルス | +25V | +37V | +75V | 業者間による |
負低速パルス | -100V | -150V | -200V | |
正高速パルス | +100V | +150V | +200V | |
負高速パルス | -100V | -150V | -200V |
■ 試験配置イメージ
・擬似電源回路網、開閉器および供試品(DUT)の間の配線は、基準グラウンドプレーンから50mm ±5mmの高さに配置します。
・DUT)は基準グラウンドプレーンから50mm ±5mmの高さかつ絶縁物上に配置します。(規定がある場合は除く)
・妨害電圧はなるべくDUT端子の近い場所で測定します。
・適当な仕様を有した測定器を使い、DUTを駆動させ電圧振幅を測定します。特に規定がない限り10回の波形測定が必要です。
注意: この試験概要は、ISO 7637-2 Ed.3 2011規格を元に記載しております。詳細な試験方法等につきましては規格書の原文をご確認ください。